季節料理まつむら ― 四季折々の恵みを器に映す老舗割烹
高槻市野見町の閑静な住宅街にひっそり佇む「季節料理まつむら」は、創業約30年を誇る大人の隠れ家割烹だ。木の温もりを生かした入口をくぐると、目にも優しい間接光が差し込む落ち着いた店内が広がる。カウンター12席と小上がり掘りごたつ2卓からなる空間は、家族連れやビジネスの会食、ひとり静かに旬を堪能したい客まで幅広く受け止める。

店主・松村悠介氏は、京都の名店で修業を積んだのち、高槻を地元に選んでこの店を開いた。仕入れのメインは近畿圏の市場だが、春は北海道産山菜、秋は松茸を産地直送で取り寄せるよう徹底。旬の素材が持つ力強い香りや食感を最大限に引き出すため、出汁や調味料にまで細心の注意を払うことが信条だ。
春の訪れを告げる「山菜の天ぷら盛り合わせ」は、こしあぶら・こごみ・たらの芽が主役。軽やかな衣ながら油切れよく揚げ、山菜特有のほのかな苦みをうま味へ昇華させる。続く桜鯛のお造りには、梅肉とすだちの爽やかなソースを合わせ、口の中に清らかな春風を呼び込む。
初夏の一皿、「鱧の落としと賀茂茄子田楽」は、氷水でしめた鱧を笹打ちにし、梅肉だれで。香ばしく焼いた賀茂茄子には自家製の甘味噌をからめ、冷やした純米酒との相性も抜群だ。茗荷や青紫蘇をあしらうことで、夏の夜に涼やかな余韻を残す。
秋になると、まつむらの名物「松茸土瓶蒸し」が姿を現す。香り高い松茸とハモ、鶏肉、銀杏を土瓶に詰め、蒸気と共に立ち上る芳香はまさに至福のひととき。ほくほくの栗ご飯は、炊き上がり直前に栗を混ぜ込むことで素材の甘みを閉じ込め、最後に乗せた京都産木の芽がふわりと香る。
冬のおすすめは、脂がたっぷり乗った寒鰤の照り焼きだ。皮目をパリッと焼き上げ、特製の照りだれを絡めることでふくよかなうま味が口いっぱいに広がる。合わせる煮物には聖護院大根とこんにゃくを昆布とあらでじっくり煮込み、寒い季節にじんわり温かさを届けてくれる。

ドリンクは高槻市内の酒蔵で生産されている地酒を中心に、季節限定の新酒やひやおろしを豊富にラインナップ。料理の最後には自家製のほうじ茶を淹れてくれるなど、細やかなもてなしが心をほどいてくれる。コースは8,000円から、アラカルト利用も可能。予算やシーンに合わせた提案がうれしい。
店内は和のしつらえを生かしつつ、気負わずリラックスできる雰囲気。カウンター越しに松村氏と会話を交わしながら、目の前で仕上がる一品一品を楽しむ贅沢は他に代えがたい。小上がり席を使った少人数の宴会や記念日利用にも最適だ。
高槻で四季の移ろいを五感で感じたいなら、一歩路地を入り「季節料理まつむら」を訪れてほしい。旬を極める匠の技が、日常に小さな感動と豊かな時間をもたらしてくれるはずだ。
【総評】
非常に豪華な突き出しをいただきました。若干通常メニューに揚げ物料理が多い気がしますが、その時の季節に応じて旬の料理をいただけるのは非常にありがたいです。
料理: ★★★
コスト:★★★
店内: ★★★
一人使い:★★★★
店舗情報
店名 季節料理まつむら
住所 大阪府高槻市野見町3-3
TEL: 072-676-3622
営業時間
月~土 18:00~23:00(料理 L.O. 22:30/ドリンク L.O. 22:30)
定休日:日曜日
アクセス
阪急京都線 高槻市駅 徒歩5分
JR京都線 高槻駅 徒歩10分


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